現代大工の悪足掻き日誌

田舎大工の作業日誌

自己満足

先週、利兼さんとtetsu_9thさんにお会いした時に話題になったが、書こうか迷った作業。
お二方からは「やり過ぎクソ野郎」と。
「クソ野郎」は創作で過剰演出(笑)
でも本家さんはそう言いたそうな顔をしてたかも(笑)

一度、本家ブログでもコメントさせて頂いた「内部壁の不陸解消」の話。
まずは納まりのおさらい。
管柱は3.5寸の背割れ無しのKD桧
間柱も同様に桧
筋交いは米松
5分厚エゾ松胴縁を1.2尺間で横に流す。

当然だが、壁下地には不陸がある。
プレカットでも避けられない。
柱の出入りもあり、3ミリくらいは当たり前。
筋交いがあれば尚更。
それを無視し胴縁を流す事もあるだろう。
電気かんなで構っても、それなりの精度は得られる。

が、しかしなぜだか不陸が許せない面倒臭い性分。
どうしても壁を真っ平らにしたい。

親方元にいた時は部屋の四隅柱を基準に出ている所を鑿で掘った。
もちろん胴縁一本ずつ。
これはかなりの手間だった。
時に少ないとはいえ中間柱や筋交いを掘る事になり、褒められた作業でない。
またミリ単位で正確に掘るのは至難の技。
深く掘り過ぎてパッキンを噛ませることもしばしば。

自分でやるようになってからは、掘るのではなくパッキンを噛ませる事で早く正確に不陸解消を目指している。

8畳の洋間とする。
四隅柱から6分出で床と天井に墨を打つ。
6分とあるが、使う5分胴縁と基準パッキンとして使う2.7ミリのカットベニヤの現物を定規に。
この墨が胴縁の上がり墨。
つまり6分にする事で胴縁とは1分の隙間ができ、その1分で不陸解消を目指す。

その墨と中間柱と間柱とのパッキン厚を読み、必要厚のパッキンをタッカーで止める。
パッキンとして使うのは基準の2.7ミリカットベニヤと4ミリ、5.5ミリベニヤ少々と結束PPバンド。
PPバンドは0.5ミリ厚をわざわざ選択。
パッキンごと床と天井際の胴縁を打つ。
これで巾木と廻縁裏となる胴縁は気持ちよく真っ直ぐに。

次は上下二本の胴縁が基準となる。
天井高に切った素性と通りの良い間柱を「不陸定規」と名付けて用意。
今回は後輩のアイデアで取っ手を掘った。
床と天井の胴縁に当て、1.2尺間の胴縁を打つ所のパッキン厚を読む。
窓枠はまだ入れておらず、窓枠周辺の胴縁を打つ所も全て。

パッキン厚が8ミリにもなる場所もある。
またパッキンがマイナス、つまり掘る場所も出るが、今回は9割方パッキンで不陸解消できた。
袋入りグラスウール断熱材を入れ、パッキンを覆い隠すようにシートを柱正面までかける。
断熱材へのタッカーはパッキンを避けるように。
窓枠を納め、胴縁を打つ。

これで不陸がほとんどない壁面が完成。
今回もまずは外壁側だけを間仕切り壁無視で胴縁を流しボードを張る。
間仕切り壁裏でボードジョイントが逃げられるので窓枠への突き付け優先でペタペタと。
すれば外壁側グルっとボードに囲われた空間に。
環境が厳しい外壁側とはボードによって縁が切れるので、多少なり断熱と防音に貢献かと。

今回はまずは二階の後輩がこの糞面倒臭い作業を。
でも自分の現場は4軒目かな?
慣れたようで、手際良く黙々も作業してくれる。
この作業はパズル的要素がありハマる人はハマる。
仕上がった壁下地に不陸定規を当て、不陸無しを確認する瞬間が至高の瞬間
でも今までしっかりと不陸解消してくれたのはこの可愛い後輩しかいないけど(笑)
ベテラン大工さんはやっている素ぶりだけ。
それでも無理に付き合ってくれているだけかと思っていたが、後輩自身の仕事でも一部採用してくれているようで少し嬉しかった。

さて手間請けでここまでやる必要はあるか?ないか?

それは重々分かっている。
病的だと言われた事もある。
作業手間は少なくない負担でもある。
でも多少なり不陸解消が必要なのも事実で無視できない。
どうせやるならば、求められている以上に自らの感性を満たす作業も時には許されるかと。

まぁ、不陸解消は趣味みたいなもんです(笑)
真似しないで下さい。
えっ!しないって
もちろん分かっております(笑)


今日の現場談義
「俺の作業」

今回の作業のように、大工それぞれに良くも悪くもどうしてもこだわってしまう事があるかと。
皆さんの譲れない、辞められない、妥協できない、こだわりの作業を教えて下さい。
もちろん真似しません(笑)