現代大工の悪足掻き日誌

田舎大工の作業日誌

玄関框

玄関土間は6尺幅で奥行きは4.5尺。
今回の框はカタログに載っている奴(笑)
最近流行りのMDFはご勘弁とあえて突き板物に。

75×150あるが面がほぼ糸目。
自加工なら2〜3分の大き目の面にしたいところ。
しかしその面の小ささは付け框との取り合いを楽にする。
大き目の面だと付け框との取り合いに、小さな留めを作らないと。

框を受ける大引には21×8ミリで溝突きしてある。
框裏にも同じ様に21×8ミリで溝突き。
そこにタモ材の21×15を入れ、框の加重を受ける。
溝に入れた背骨によってお互いの関係は常に均一で、納めてしまえば仕事が早い。

もう一本溝突き。
フロアの差し込み用。
フロア下端6ミリを差す。
しかし化粧面の近くに溝を突くのはそれなりにリスクがある。
昨日の上り框同様に丸のこで溝突き。
電子小穴カッタが欲しい(笑)

溝突き好きとして、ふと思う。
6ミリ位なら丸のこを組みカッタ仕様にできないかと。

ボンドを付け框を納める。
付け框の掘りから120ミリビスで止める。

差し込むユニフロアも丸のこでシャクり、五徳かんなで微調整。
ウレタンボンドも厚みとして出るので、浮き上がり防止だけでなく框に溝突きは必要。

30×150の付け框裏に12ミリ合板を貼り付ける。
ボンドとコンパネビス併用。
合板を框天より15ミリ程の出る様にしてそこから柱や間柱にビス止め。
実は玄関サッシと付け框との取り合いはかなり大変だったが、スライドの二段深さ切替機構のおかげで上手く納められた。
玄関サッシの窓枠はこの付け框に乗る形になる。

階段、玄関框とうるさいところが終わった。
階段笠木も踏板とは絡まない。
和室は大壁の畳敷きで、気合は要らない。
あとは新建材のご機嫌取り。

思い出の現場
「玄関框編」
玄関框に触れると必ず思い出す現場がある。
親方に弟子入りして1年経った頃、それまで監督として勤めていた工務店の下請けで玄関ホール床の張り直しに。
そこは築15年程の大手ハウスメーカー物件で、そこそこの豪邸。
お施主さんが、玄関框は建て替える前の家の大黒柱を加工して付けてもらっと。
お祖父様ご自慢の欅、そのまま活かして欲しいとの依頼で、増し張りではなく張り直し。

しかし一目で欅ではないと分かった。
そして木目からおそらく無垢でもないとも。
床を捲るとやっぱり合板ベースの突き板物。
お施主さんに見られない様配慮したが、あっけなく見つかってしまった。
見つかった以上、正直に現状を説明。

その時のお施主さんの顔は、今でも忘れられない。

既存フロアが9ミリでどう納めるか?迷っていたがお施主さんがその框は二度と見たくないので、隠して欲しいと。
こちらとしては都合良く増し張りとなったが、重い気持ちのまま作業を終えた。

プロである以上、形としてお客様の満足いく物を提供しなければならない。
しかし、お客様の気持ちを汲む事も大切な事。

今回は脇屋の新築。
否応なしにお客様と触れ合う。
手間請けでも、形だけではなく出来る事はあるはず。
お客様との会話は大切な時間。