現代大工の悪足掻き日誌

田舎大工の作業日誌

下がる仕口

今日から下に降りて一階筋交い入れ。

先に二階の筋交いを入れるなんて一昔前では考えられなかった事。
今回は剛床仕様の為、一階の傾ぎ修正はほぼ不可能。
二階の筋交い入れの前にも確認しているが、再度下げ振りで確認。
良好で安心する。

一階には筋交いのたすき掛け、いわゆるダブルが8箇所もある。
正直面倒臭い、でも少し嬉しい(笑)
実は筋交いのたすき掛けは好きな作業の一つ。
きちっと納められた時の絵面が好き。
二階は2箇所しかなく物足りなかった。

ダブルの施工手順は人それぞれでいろいろとあると思う。
好きこそ物の上手なれ的か、そこそこ早く綺麗と自負。

肝心なのは間柱に筋交い欠きをする時、縦の切り込みを必要最低限にする事。
余分な切れ込みは割れを誘発し、見た目もよろしくない。

調子が出るまでは慎重に丸のこは手前手前で止め、最後は鑿でかまう。
でも調子が出てくると、ほぼ丸のこだけでうまくいく。
この瞬間「できる大工は違う」と一人でほざいてみたり(笑)

3.5柱に1.5寸厚筋交いなので、ダブルの真ん中間柱はほとんど身がなくなる。
折れない様に割れない様に慎重に納める。

筋交いはそれなりに張って入れる。
空いたら完全な失敗だと思っている。
切り墨は完全残しでカットし、入れ込み側は小鉋で面取り。

間柱も含めて玄能だと痕が醜く入り辛いので、必ずチビカケヤで。
サッシ下地の窓台まぐさも同様。
これまでのお客様の中には、玄能痕が気になる方もいらした。

その筋交いをこれでもかと張って入れるベテラン大工さんがいる。
頭を先に入れて、下端を斜め上にカケヤでぶっ叩く。
側にいると振動でびっくりする程。
時々、頭が外れてエライ目にあっているが(笑)
おそらく、切り墨プラス一分ずつで2分は長いと思う。

きっと何年経っても空く事はないと思う。
しかし、張りすぎて桁や小梁を持ち上げたりする事も度々。
先にニートか込み栓してからにしては?と言った事もあるが、毎回バーン!バーン!と。

一番問題と思ったのは通し柱への胴差し。
二階の筋交いで胴差しを押し下げていた事が。
http://www.fujiijisya.jp/kouzou2.htm
こちらのプレカットの多くはB工法。
ホゾ1寸に襟場5分しかない。
そしてホゾ下端はアール底。

張った筋交いに限らず下がりやすい造り。
建前で無理して入れたり、近くをぶっ叩いているとすでに下がっている事も。
経年で下がる事は容易に想像できる。
かなり前から気にはしていたが、今は自分なりに手を入れ対策をしている。

ここでプチクイズ!

と思ったが、対策と言っても手間も材も掛けられないので大した事はしていない。
1尺5寸程度の間柱キレを胴差し下に、ボンド付け通し柱に張り付ける。
ビスで仮止めし5分丸の込み栓二本を差して終了。
筋交いや金物がある時はそれらを避ける様に切ったり掘ったりしている。

正直、何もしないよりはマシ程度だと思うが、引き渡し前に下がる事はないと思う。
でも、入れるタイミングが難しい。
元請けさんは理解して頂いているが、お客様にもきちっとした説明が必要。
そのままでは、間違ったり失敗してやっつけで入れていると受け取られる恐れがある。
また金物に絡む時は検査後に入れなければならない。

根本的にはあの仕口を何とかして欲しいけど…。
やっぱり手刻みには敵いません。
また通し柱の胴差し仕口の欠損が大きく、存在自体の論議があるがまたの機会に。

とりあえず今日は筋交い26本入れた。
うちダブルが8箇所。
明日はサッシ下地。
肘がまだダメなので、後入れ間柱にするかな(笑)