現代大工の悪足掻き日誌

田舎大工の作業日誌

手摺取り付け

ゴールデンウィーク中の話。
母親の為に実家の玄関とローカ、トイレと洗面所に手摺を取り付けた。

実家は築26年になる在来軸組。
大工を抱えている地元工務店施工。

カメラが趣味の父親のおかげで建築中の写真がたくさん残っている。
確か当時、日本家屋は平屋であるべきで二階があって更にベランダがあるのはおかしいと言っていた気がする。
そんな父親が建てた我が家は洋館の二階屋。
カラーベストの寄棟に鎧張り風のサイディング。
眩しかった白いサッシの今は…。
そして大きなベランダがある。
でも洋館なのに通しの和室があるのは田舎らしい。

年代的にプレカットと新建材が大きな波となって業界を席巻する直前かな?
今は貴重な手刻み。
洋間の造作材は一部を除いて無垢。
決して高くない単価の住宅だと思うが、大きなリフォーム無しで今に至る。

この住宅の建前が中学生だった自分が建築を目指すきっかけ。
和室の天井板の一枚だけが反対を向いていると知ったのは大工になってから(笑)

話はそれたが手摺の話を。

在来大壁で胴縁を横に流していると手摺取り付けは少し大変。
玄関やローカ、居室は75ミリの先行巾木に尺間胴縁。
トイレは後巾木に尺間胴縁。
ボードは9ミリ。

つまり手摺取り希望付近の胴縁芯は680ミリか606ミリ。
手摺としてはかなり低い。
背の低い母親に合わせても750ミリに手摺を取り付けたい。
でもその750ミリの直裏には下地がない。
105×15の檜貫を受け板としてつけるが、その受け板も簡単には取り付けられない。

そこで希望の高さを出した後、間柱と柱の位置を把握する。
受け材で隠れる為、細いが足の短いどこ太くんではなく千枚通しでぶっつりと。
特に入隅部分は大切。
胴縁施工の場合、入隅部分に縦下地が無い時がある。
それでも片方はあるはずとそれを把握する。
でも時に胴縁の高さを互い違いにし、縦下地がどちらにもない時もある。
今回は片方縦下地。

受け材で隠れ、裏に柱か間柱がある部分を40ミリホールソーで9ミリボードを抜く。
縦に二箇所。
当然、柱とボードには胴縁厚である15ミリの空間がある。
その空間を埋めないと受け材は付けられない。

そこでその穴に同じホールソーで抜いた12ミリ合板の丸いキレを二枚重ねて入れる。
既存のボード9ミリ+胴縁15ミリの24ミリと同厚になり、壁面が揃う。

フィニッシュで仮止めし真ん中の錐穴にビスを揉む。
このビスは新建材建具の枠組みで使う様な頭の大きいヤツ。

これが受け材の下地というかパッキンとなる。
柱や入隅部分に下地を足す時は65ミリホールソーを使う事もある。

また受け材無しで直接ブラケットをつける時には、ブラケットよりほんの少し小さいホールソーで対応が出来る。
しかしエルボが必要なレイアウトの時は厳しく、使える場面はかなり限られる。
施工もかなりリスキーで神経をすり減らす。
何度かやっているが、基本受け材は必要だと思う。

ホールソーを使うのは仕事が早いのはもちろんだが、既存ボードの損傷を抑えたいから。
カッターや引き廻しを使っても、どうしても切り口は荒れて傷む。
最悪はパンク、隠れるといっても強度は必要。

受け材は90ビス止め。
今回は楽してビスキャップで
ダンドリの受けワッシャーの要らないタイプ。
さっき揉んだ下のビス頭を拾わないように注意。
入隅は上半分留め加工で、縦下地側を先に付け荷を持たす。
受け材の木端と木口は2分銀杏面にし、それらしく。

受け材が廻れば後は語るほどの事はない。
金属製のエンドキャプとブラケットそして自在エルボを付け丸棒を這わしていくだけ。

丸棒はこれまでの現場のキレと、材木屋さんから事情を知って無償提供して頂いた物。
玄関の式台の杉板もいつもの元請けからの無償提供品。
ありがとうございます。

実家とはいえ、プロが付ける以上確かな強度を。
安全の為の手摺が怪我の原因なんてあってはならない。

ボードアンカーでの手摺取り付けは犯罪的行為に思う。