現代大工の悪足掻き日誌

田舎大工の作業日誌

入口枠 片引き枠編

基本はドア枠と同じだが、鴨居の厚さが違う。
縦枠は102×27ミリ、鴨居は98×43ミリ。
方立は50×27ミリ。
それぞれに見切り溝18ミリは突いてある。
しかし入隅になる縦枠は見切り無し。
もちろん鴨居には21ミリ溝,

縦枠は新建材と違い、戸当たり側も引き込み側も同寸。
戸当たり部分は40ミリ幅、深さ3ミリで戸受けの溝突き。

まずはドア枠と同じ様に床の突き付けをかまう。
マグサは15ミリ高い。
12ミリ長く切って、現状でヒカりケガく。
引き込み側の半分は見えなくなる為、多少短く切り考慮しない。
手放しで基準墨に合えば合格。
鴨居天端でカット。

縦枠を仮り入れし鴨居長さをのび助で採寸。
基本の長さは戸受け溝ではなく縦枠本体。
胴縁で長さの塩梅を確かめる。
戸受け溝がある為、単純に矩には切れない。
溝は6ミリ長めに切って後で調整する。
つまり溝分がホゾというかツノになる。

某先輩大工は単純に矩で切って溝分を後から足す荒技をしていたが、さすがに真似できない。
スライドのガイドに枠のキレを当て、ガイドと縦枠を10センチ離す。
手前からと奥からと切って溝ツノを残す。
残りは手鋸で切り鑿で仕上げる。
問題がなければ溝ツノを切る。

枠を組み、仮り入れする。
建具屋さんの判断で完全垂直にこだわるより上端、下端が同寸合わせ優先と決めている。
床側には鴨居の長さ合わせで使った胴縁を入れ、上下の長さを合わせる。

いくらプレカットでも下と上では若干差が出る。
両入隅になるトイレなどは逃げが効かない所は、ボード張りの前に同寸になるよう無垢パッキンを入れ調整してある。
片入隅の場合、枠入れのこの瞬間に同寸になるよう無垢パッキンを入れる。

鴨居も仮止めし、対角を測る。
それぞれ納まりに問題がなければ方立の位置を出す。
閉めた時、開けた時に戸と方立が揃うよう設定。

全てがよければ必要な墨をし一旦、外す。
方立は鴨居より2ミリ縦勝になる為、鴨居を掘る。
しかし方立分全て掘る訳ではなく6分だけ掘り、残りは方立側を飛ばす。
方立下端は、以前は床を掘って方立をホゾにして入れていたが、ここ最近は手抜きで5分込栓の切れ端を。
床に15ミリ穴を開け込栓を差す。
鴨居上に15ミリ余裕がある、込栓は床上10ミリ程度で切る。
方立下端にも15ミリ穴を。

まずは三方枠組む。
方立を慎重に入れ、鴨居天からビス止め。

枠が組上がれば現状へ。
でもさすがに一人で運ぶ気にならない。
しかし現場の大工は自分一人、外壁屋さんに丁重にお願いし二人で運ぶ。

この段階では枠類は傷防止の為、養生ボード6ミリの二枚重ねに乗っている。
枠を浮かした状態で基準墨まで奥に入れる。
養生ボードを外し枠をインテリアバールで降ろしていく。
最終的には縦枠天端にクサビをかう。
方立に込栓がすんなり入ると気持ちいい。

引き込み側は隠れる所に脳天ビス。
反対側はサポートリフターをかい、柱側から斜めビス止め。

今回は全ての片引き戸は外壁側に入口がこない為、先行ボードでも困らない。
逆にいうと外壁側に入口がくる時は脳天ビス止めが必要になる。
嫌なら先行枠入れとなる。

鴨居上に胴縁を入れクランプをかい、マグサからビス止め。
鴨居が厚いた為、見切り受けの役割りがないので真ん中に一本。
今回はカンナの出番あり。

方立内の半壁は下地30ミリ+ボード12.5ミリ。
方立に絡むものは素性の良い和室間柱を流用。
50×30とし、方立に突いた21ミリ幅で深さ3ミリの溝にはめ込むよう加工。
溝によりお互いの関係は完璧で狂いの相殺も狙う。

他の材は30×40の野縁。
上下に野縁を這わせ縦に9寸間で二本立てる。
もちろん素性の良いものを選ぶが、反り加減が喧嘩するよう入れる。
壁になる側には手摺下地とボード下地と兼用となる貫を入れる。
もちろん貫厚分堀る必要がある。
これら野縁は家一件分丸々一度に加工してある。
今回は一階、二階で片引き枠は7本。
そこそこの量になる。

下地が出来れば先行幅木。
他は裏が7ミリあるが、今回は裏無し。
見切りはドアと同じ。
最後に床にアルミレールを這わせて終了。
新建材の三倍以上は時間が掛かる。

今日の小ネタ
今回も5分丸の込栓を使ったが、必ず常備し多用している。
例えば根太掛けの場合、釘やビスだけでなく3尺ピッチで込栓を入れている。
リフォーム現場で丸釘だけで下がっている根太掛けを良く見たから。
また奥桁にも同様に使っている。
他には階段の側板など、荷を受ける所に使っている。

これは重要文化財の蔵再建現場で込栓の素晴らしい威力を目の当たりにしたからである。