現代大工の悪足掻き日誌

田舎大工の作業日誌

ケーシング入口枠下地施工

たぶん他の現場と違い、入口枠が一切入っていないがボード張りは7割ほど終了。
ここから入口枠下地を作る。

枠の納まりに関しては、かなりこだわりがある。
今回はケーシング枠だが、ノンケーシングでも同様に
・小さい小壁はなるべく作りたくない
・MDFケーシングの幅詰めはしたくない
・また、ケーシングを納めてから絡むもう一方の壁を張る事もしたくない。
つまりケーシング正面幅そのままを活かしたい。
・同じ枠ではすべてのケーシング足長を必ず同一にし、見た目を揃える。
・両脇の下地はキチキチに作り隙間を一切作らない。
枠ビスが行く所だけパッキンを入れて枠を持たせるような事はしない。
はっきり言うと、MDF枠を枠材としての強度が無いと思っており信頼していない。
・壁厚を統一するのではなく、あくまでも枠の納まりを優先させる
など面倒臭いこだわりがある。

さてここからは、かなり細かい話になるのでご了承を。
二階3尺幅トイレドア枠を例に。
尺モジュールで柱は3.5寸(105ミリ)
910−105=805ミリ、これが柱の内々寸法。

外壁側胴縁15+不陸解消用基本パッキン2.7ミリ+ボード12.5ミリで、ジャスト1寸のおよそ30ミリが壁の仕上がりとなっている。
805−30=775ミリが現状の内々寸法。

今回使う○ダのドア枠幅は780、755、735、640とあるが、735を選択。
幅的には755が入るが、ケーシング外寸法は枠幅より広くなる。
○ダの場合、枠幅外寸法より9ミリケーシングが外に出る。
つまりケーシング幅をそのまま活かす為には、枠外幅735+9+9=753ミリに。
これがターゲット寸法。
このターゲット寸法で両壁を仕上げる事によりケーシングがそのまますっぽりと納まり、小壁も隙間も無しになる、すこぶる気持ち良い納まり(笑)

すでに外壁側は30ミリで壁が張ってあり775ミリが現状。
775−753=22ミリでこれがもう一方の壁の仕上がり寸法。
22−12.5ボード=9.5ミリが壁の下地厚。
または22−9.5ボード=12.5ミリ。

下地とボードの構成はとにかく、柱から22ミリで壁を仕上げる事が重要。
今回は9.5ミリ下地に12.5ボード。
トイレ内は紙巻きや手摺下地を兼ねて9ミリ合板を張り12.5ボード。
その他3尺内ドア枠は15ミリ胴縁を12.5に落とし9.5ミリボード。
どちらも22ミリ壁を起こし、ターゲット寸法である753ミリ幅が出来上がる。

かなりシビアな計算はあくまでも設計上の事。
現状は微妙に誤差があり個々に対応しなければならない。

ターゲット寸法である753ミリで壁を構成しても、枠外寸法は735。
18ミリ差がある。
9ミリ合板を建具上と同じ壁厚に切り、それぞれ仕上がった壁へ貼り付ける。
両壁張る事で753−9−9=735ミリの枠外寸法になる。

そしてこの9ミリ合板がそのままケーシング受けにもなる。
時々、入隅側のケーシング受け無しで墨に合わせて入れ込む方もいるが、真っ直ぐ入れるのは難しくあくまでもボンド施工になってしまう。
簡単に動き、巾木入れで押してしまう事もある。
入隅部でもケーシング受けは必要。

今回、3尺内幅を例にしたが入隅でなければ枠外寸法下地をつくる。
片方が入隅なら上記の様に壁プラス9ミリ合板、もう片方は枠外寸法で下地。
枠ビスで幅を調整するのではなく、あくまでも下地自体で幅をしっかりと構成しMDF枠をキチキチに入れる。
手間がなくてもここは譲れなく妥協しない。
下地は絶対にキチキチ。

また壁厚を優先しケーシング幅を落とす事は、巻き込んだシートを剥がしMDF木端をさらす事になる。
カット時や入隅にきつく入れ込んだ時にめくれる事も多々ある。
クロス施工で水分を吸う事も考えられる。
そもそも見込みの小さいケーシングは見た目も悪い。

ケーシング幅を落とさなければならないなら、ケーシング小穴にボードを差す形の寸法にし
一方のみノンケーシングにする。
あくまでもケーシングはサラで使うか、無しかのどちらか。

納まり優先で間仕切り壁厚は納まりに応じて可変させていく。
しかし外壁側は30で統一。
壁厚が変わるので、枠入れは柱芯とは限らない。
建具上だけの絡みなら直張りにする事もある。
ケーシング見込み足長に合わせて柱芯と枠芯は微妙にズラしていく。

分かり辛く申し訳ないが、枠の納まりは徹底的に検討している。
それでも小壁がどうしても必要な場合、30ミリ以下にはならないよう納める。

熟慮して納まりを決めているが、一人で作業するなら問題ない。
でも相棒がいる場合、妥協する事もある。
実際、これまで熟慮した納まりを簡単に反故されたりも。
初期の頃は自ら策に溺れたりもあった(笑)
今の若い相棒は、この可変壁厚納まりに悩みながらも十分に対応してくれる。

しかし胴縁施工と共に、可変壁厚にも決定的な欠点がある。

それは部屋が狭くなる事。
直張りは当然として、時には細かい納まり無視より狭く事もある。
今回のトイレは753ミリ、両面直張りなら780ミリ。
広い事にも価値があり、納まり優先が必ずしも「良」とは限らないのも事実。

それでも今回、ノンケーシングのクローゼット枠幅は1639ミリ。
化粧ボード仕上げのクローゼット壁は1639に仕上げてあり枠をスッポリ入れる納まりに。
本来取れる最大有効幅からはそれなりに詰めてあるが、見た目的にも施工的にも良いと思う。
もちろん使い勝手も。
これまで詰めた分をニッチや壁内収納の奥行きに活かす事もしてきた。
大きく詰まる9尺クローゼットの場合、何かしら手を打ってきた。

こういった事を細々考えるのは面倒臭いがパズル的で楽しくもある。
思惑通り納まった時は感慨深い。

仕事を覚える段階の親方元では、建具枠は自加工し好きな寸法で納めてきた。
つまり小壁を作る事も、無駄に詰める事も、いたずらに喧嘩する納まりもして来なかった。
常にスッキリで、結果とし建具枠納まり優先とも言える。
手間請けでも、その考えがあるのかもしれない。
新建材でもスッキリ納めたい。