現代大工の悪足掻き日誌

田舎大工の作業日誌

地球のためにリサイクル 養生編

今の住宅建築現場においてリサイクルと言えば養生。
養生シートに養生ボード、養生カバーもある。
時にフロアや枠材の梱包ダンボールも養生に早変わり。
これも立派な再利用。

日曜日の今日、完成引き渡しを目の前迫った新城現場の養生の引き上げに。
ちなみに自分の養生はこんな感じ
http://d.hatena.ne.jp/h168/20121218/1355831911

普段でも、養生を外し傷をチェックする時はそこそこ緊張感がある。
今回の御宅はオール無垢材、しかも仕上げは柔らかい杉。
現場を離れてからは自分の苦労が報われるか否か心配な日々を過ごしていた。

現場に入って一気にテンションが下がる。
あれだけ綺麗にして引き渡したはずの現場が汚い。

クロスの細いキレやパテ、それにカッター折れ刃。
コンセントボックス下にはボード粉。
2センチ程度の電線被覆が無数に転がっている。

心より配慮して欲しいと願いしたが、悲しいかなこれが現実。
それにしてもこの状況は現在の住宅建築のレベルからしても最低レベル。
電気屋さんは顔馴染みで分かっていたがいつも以上に酷い。
掃除する気がないのは明白。
クロス屋さんは愛想の良い返事は素晴らしいが、綺麗な仕上げと傷への配慮は持ち合わせてないらしい。

ある程度の傷を覚悟する。

いつもならまず箒で軽く掃く。
しかし今回は、その前に床に落ちている職人の良心を拾っていく。
カッター折れ刃と電線被覆の数に比例して怒りが込み上げてくる。
パテダマも養生ボードだけでなくサッシから窓枠とそこらじゅうに。

箒で履き養生ボード同士を繋いでいるガムテープ外し養生ボードを剥がしていく。
養生ボードは決めた寸法で構成しているので、運ぶ時もストックも再利用も容易い。
養生シートを止めているガムテープを外し養生シートをフリーにする。
その養生シートを丸めながら剥がしていくが、最後にマジックで長さを記する。
例えば6畳の部屋なら12尺内と。
再利用する時、この数字が生きてくる。
また養生シートはカットせず折ってサイズを調整してあるが、これも再利用の為。

そして残るは壁際にぐるっと廻っている養生テープ。
これは最大限の配慮をしながら剥がしていく。
慎重に尚且つ慎重に。

すべての養生を剥がし終わるころには更にテンションが下がっていた。
何箇所か傷を把握していたが、その内一箇所がかなり酷い。
明らかに何かを落とした跡であり、壁際の養生テープごと床にめり込んでいた。
30ミリ系くらいのアール2/3跡。一番深い所は3ミリはある。

自分の後に現場に入る他の職人さんに一番望みお願いした事は傷をつけない事ではない。
もし傷を付けてしまったら直ぐに報告して欲しい事。

直ぐなら対処法を考える時間も処置する時間もある。
何よりお客様が目にする前に、把握する必要がある。
犯人探しや責任を押し付けるつもりは鼻から無い。
ただただ綺麗な状態でお客様に引き渡したいだけなのに。
分かってもらえず虚しくなる。

自分はある程度の傷は処置する前にお客様に見て頂き、謝罪をした上で対処法を説明し判断を委ねる。
無垢材ならどんなに隠そうとしても無理。
新建材の場合、微細の傷は報告無しで補修するが、ある程度の傷は同様にしている。

大きな傷に関して引き渡し後にお客様が認識された時、必ず信頼を失う。
一度信頼を失えば、他の微細の傷も許し難くなってしまう。
過去には苦い経験がある。
しかし事前に謝罪ししっかりとした説明の上、対処すれば多くのお客様は受容して下さる。
高い補修業者に頼むにしろ事前報告はしている。
誠意ある対応と信頼関係は自分の身を助ける事にもなるはず。

今回の傷は大きく凹んだだけでなく繊維も損傷している。
まずは元請けさんに相談し、続けて電話でお客様に報告。
直ぐに来て頂き謝罪し判断を伺ったが即答で「補修して頂ければ大丈夫です」と、ありがたいお言葉。
お客様に恵まれたと安堵しつつ、テンションガタ下がりはどうしようもない。
深いため息の中、現場を後にする。


今日の現場クイズ

簡単なので早い者勝ちです。
床から剥がした養生テープは50センチくらいの長さで窓ガラスにペタペタと貼っていきます。
かなりの数貼ってあります。

では、なぜ?こんな事をしているのでしょうか?

現場に着く前には正解が出ていると思うので、先にコメントしておきます。

利兼さん
正解です!(笑)